不妊治療を続けていると、こんなことを考えたことはありませんか?
「このまま治療を続けても家計は大丈夫かな?」
「あと何回なら採卵できるんだろう?」
「新NISAも始めたいけれど、治療費とのバランスはどうすればいい?」
「将来後悔しないためには、どこで線を引けばいいんだろう?」
私はAMH0.6と分かってから転院を経験し、採卵を6回行いました。
保険診療だけでなく、検査やサプリメント、交通費なども含めると、不妊治療にかかった費用は100万円を超えています。
治療を続けるたびに思っていたのは、「あといくらまでなら使っても、将来の自分たちを苦しめないだろう?」ということでした。
もちろん、「赤ちゃんを授かりたい」という気持ちは今も変わりません。でも同時に、
- 老後のお金
- 将来の生活
- 夫婦二人の人生
これらも大切にしたいと思っていました。
だから私たち夫婦は、「不妊治療に使っていいお金」と「絶対に残しておくお金」を分けて考えることにしました。
この記事では、その考え方を「防衛ライン」と呼んでいます。
防衛ラインとは「絶対に守るお金」のこと
ここでいう防衛ラインとは、「どんな結果になっても、将来の生活を守るために残しておきたいお金」のことです。例えば、
- 毎月の生活費
- 急な病気や失業に備える生活防衛資金
- 老後資金
- 数年以内に予定している大きな支出
こうしたお金まで治療費に充ててしまうと、不妊治療が終わったあとに、別の大きな不安を抱えることになってしまいます。
一方で、防衛ラインを決めておくと、「ここまでは納得して治療を頑張ろう」という気持ちで前向きに治療へ向き合いやすくなります。
私自身、この考え方を取り入れてから、お金に対する漠然とした不安が少しずつ減っていきました。
防衛ラインを決める3つのメリット
① お金の不安が「見えない恐怖」ではなくなる
不妊治療がつらい理由の一つは、「終わりが見えないこと」です。
費用も同じで、「いくらまでなら大丈夫なのか」が分からないまま治療を続けると、不安はどんどん大きくなります。しかし、あらかじめ上限を決めておくと、
「我が家はこの金額までは納得して治療を続ける」
という共通認識ができます。
お金の問題を数字で整理できるだけでも、精神的な負担は軽くなりました。
② 夫婦で話し合いやすくなる
「もう少し続けたい。」「そろそろ家計が心配。」どちらの気持ちも自然なものです。
ただ、お互いに感情だけで話し合うと、「まだ頑張れる。」「もう無理。」という平行線になりがちです。
そこで役立つのが、防衛ラインです。
数字を見ながら話すことで、「あと〇〇万円までは治療を続けよう」「自費診療に切り替わったら、一度見直そう」など、感情だけではなく現実的な視点でも話し合えるようになります。
③ 「治療」と「これからの人生」の両方を大切にできる
不妊治療は、とても大切な時間です。でも、それと同じくらい、治療が終わったあとの人生も大切です。
子どもがいる未来でも、子どもがいない未来でも、安心して暮らせる家計を整えておくことは、決して無駄にはなりません。
私は、「治療か、お金か」という二択ではなく、「治療も将来も、どちらも大切にするための考え方」として、防衛ラインを決めました。
このワークは「正解」を出すものではありません
ここで一つ、お伝えしたいことがあります。この記事でご紹介する計算方法は、「治療費は〇〇万円までにすべき」という正解を示すものではありません。
年齢や治療内容、収入、家族構成、住んでいる地域によって、それぞれの家庭に合う金額は違います。
あくまで、「我が家はどう考えるか」を整理するためのワークとして読んでいただけたら嬉しいです。
治療方針については主治医と相談し、お金の制度については厚生労働省や金融庁などの公的機関の最新情報をご確認ください。
実際に「我が家の防衛ライン」を計算してみましょう
ここまで読んで、「考え方は分かったけれど、実際にはどう計算すればいいの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
次は、家計簿が苦手な方でも30分ほどでできる、「我が家の防衛ライン計算シート」5ステップをご紹介します。
一緒に、今の家計を整理しながら、「安心して治療を続けられるライン」を見つけていきましょう。
【実践】我が家の防衛ラインを決める5ステップ
ここからは、実際に防衛ラインを計算していきます。とはいえ、難しい計算は必要ありません。必要なのは、
- ノート
- 電卓(スマホでもOK)
- 30分ほどの時間
だけです。
今回は1円単位の正確さではなく、「我が家の大まかな防衛ラインを知ること」が目的です。
肩の力を抜いて、一緒に進めていきましょう。
STEP1 今の「総資産」を把握する
最初に確認するのは、「今、我が家には全部でどのくらいの資産があるのか」です。
ここでは、10万円単位くらいのざっくりした金額で十分です。
例えば、次のようなお金を書き出してみましょう。
✅ 普通預金・定期預金
✅ 証券口座の残高(新NISA・特定口座など)
✅ iDeCo(現在の評価額)
✅ 現金で保管しているお金
✅ その他の貯蓄
反対に、住宅や車など、すぐに現金化する予定がない資産は、今回は含めなくても大丈夫です。例えば、
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 普通預金 | 250万円 |
| 定期預金 | 150万円 |
| 新NISA | 120万円 |
| iDeCo | 80万円 |
| その他 | 20万円 |
合計:620万円
このように、「我が家の現在地」を把握することが最初の一歩です。
ポイント
ここで大切なのは、「評価しないこと」です。
「少ない…」「もっと貯めておけばよかった…」と思う必要はありません。
今の金額は、良い・悪いではなく、現在地を知るための数字です。
まずは現状を知ることが、防衛ラインを考えるスタートになります。
STEP2 3〜5年以内に使う予定のお金を書き出す
次に、近い将来に予定している支出を書き出します。
これは、「不妊治療とは関係なく、将来必要になるお金」です。例えば、
✅ 車検・車の買い替え
✅ 引っ越し費用
✅ 家電の買い替え
✅ 住宅の修繕
✅ 賃貸の更新費用
などがあります。例えば、
| 予定 | 金額 |
|---|---|
| 車検 | 15万円 |
| 冷蔵庫買い替え | 20万円 |
| 引っ越し | 80万円 |
| 旅行 | 20万円 |
合計:135万円
このように、今後数年以内に必要なお金は、最初から確保しておくことが大切です。
「何にいくらかかるか分からない」という方も多いと思います。
その場合は、無理に細かく計算しなくても大丈夫です。
例えば、「3〜5年以内の支出」として、100万円〜200万円程度を目安に考える方法もあります。
もちろん、これは一例です。ご家庭によって必要な金額は異なりますので、「将来使う予定のお金」を思い浮かべながら、無理のない範囲で考えてみてください。
ケース① 世帯年収500万円
例えば、
- 共働き
- 世帯年収500万円
- 貯蓄300万円
- 賃貸暮らし
- 車を1台所有
という家庭をイメージします。
この場合、生活費に対する貯蓄の割合が比較的重要になります。
そのため、「今ある貯蓄をすべて治療費に使う」のではなく、まずは急な病気や失業などに備えるお金を残すことを優先したいところです。
治療を続けることももちろん大切ですが、家計に無理が出ると、治療後の生活に大きな影響を与える可能性があります。
「家計を守りながら治療を続ける」という視点を持つことが、防衛ラインを考える第一歩になります。
ここまでできたら、一度合計してみましょう
ここまでで分かった数字は、
- 現在の総資産
- 近い将来に必要なお金
の2つです。
まだ防衛ラインは決まりません。
しかし、家計を整理するだけでも、「思っていたより余裕がある」あるいは「意外と余裕が少ない」と気付く方も多いはずです。
この「気付き」が、とても大切です。
STEP3 「生活防衛資金」と「老後資金」を考える
STEP1・STEP2で、
- 今ある資産
- 近い将来に使う予定のお金
が見えてきました。
ここで次に考えたいのが、「絶対に手を付けたくないお金」です。
私はこれを、「防衛ライン」と呼んでいます。
① 生活防衛資金を残しておく
まず最優先に考えたいのが、生活防衛資金です。
生活防衛資金とは、病気やケガ、失業など、予想していなかった出来事が起きても生活を続けられるように準備しておくお金のことです。
一般的には、生活費の数か月〜1年分を目安に考えるケースもあります。ただし、必要な金額は、
- 共働きかどうか
- お子さんがいるか
- 住宅ローンがあるか
- 自営業か会社員か
などによって大きく変わります。そのため、「○万円あれば安心」という正解はありません。
私たち夫婦も、毎月の生活費を書き出し、「最低でもこの金額は残そう」というラインを話し合って決めました。
② 老後資金も「今」考えておく
もう一つ忘れてはいけないのが、老後資金です。
不妊治療中は、どうしても「今月の治療費」「次の採卵」に目が向きがちです。
でも、将来の生活も、同じくらい大切です。
ニュースなどでは、「老後2,000万円問題」という言葉を耳にした方もいるかもしれません。
これは一つの試算であり、すべての家庭に当てはまる金額ではありません。
必要な老後資金は、年金額や退職金、住まい、生活スタイルなどによって異なります。
だからこそ、「我が家はどうだろう?」という視点で考えることが大切だと感じています。
我が家ではこう考えました
私たち夫婦は、「将来のお金まで治療費に使い切ることだけは避けよう」という考え方で話し合いました。
子どもを授かる未来でも、夫婦二人の未来でも、どちらになったとしても、安心して暮らせる家計は残したい。そう考えたからです。
その結果、「ここから先のお金には手を付けない」という防衛ラインを決めることができました。
防衛ラインが決まると、治療を続けるかどうかを考える時も、以前より冷静に話し合えるようになりました。
STEP4 「今、本当に使えるお金」を計算する
ここまできたら、いよいよ防衛ラインを計算します。考え方はとてもシンプルです。
防衛ラインの計算イメージ
総資産-3〜5年以内に使う予定のお金-生活防衛資金-将来のために残しておきたいお金=今、治療や資産形成に使える余剰資金
ここで大切なのは、余剰資金=すべて治療費ではないということです。
このあと、治療費と将来への備えに分けて考えていきます。
STEP5 不妊治療と新NISAの予算を分ける
余剰資金が分かったら、最後に考えたいのが、どう配分するかです。
例えば、余剰資金が300万円あった場合、すべてを治療費に使う方法もあります。
一方で、将来への備えも考えるなら、一部を資産形成に回すという考え方もあります。
例えば、余剰資金300万円⇒治療費200万円⇒新NISA100万円
このように、最初から役割を分けておくことで、治療中も「全部使ってしまうかもしれない」という不安が少し軽くなりました。
もちろん、割合に正解はありません。
それぞれの家計や価値観に合わせて、夫婦で話し合って決めることが大切です。
モデルケース② 世帯年収700万円の場合
ここでは、一つの例として、世帯年収700万円のケースを考えてみます。例えば、
- 共働き
- 世帯年収700万円
- 住宅ローンあり
- 貯蓄800万円
- 新NISAを始めている
という家庭の場合、治療費だけではなく、住宅ローンや老後資金とのバランスも考える必要があります。
そのため、「余剰資金があるから全部治療費」ではなく、治療・生活・資産形成の3つをバランスよく考えることが、家計を守るポイントになります。
モデルケース③ 世帯年収900万円の場合
最後に、世帯年収900万円前後のケースを考えてみます。例えば、
- 共働き
- 世帯年収900万円
- 住宅ローンあり
- 貯蓄1,500万円
- 新NISAも利用している
という家庭です。
一見すると、「年収が高いから、不妊治療費もあまり気にしなくていいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、実際はそうとも言い切れません。収入が増えると生活水準も上がりやすく、
- 住宅ローン
- 教育資金(将来子どもを授かった場合)
- 老後資金
- 車の買い替え
- 親の介護
など、将来に向けて考えるお金も増えていきます。
そのため、「収入が高い=無制限に治療費を使える」というわけではありません。
年収に関係なく、「ここまでは納得して使う」という防衛ラインを決めることが、家計を守ることにつながります。
3つのモデルケースに共通していたこと
ここまで、世帯年収500万円・700万円・900万円の3つのケースをご紹介しました。
年収は違っていても、共通していたことがあります。
それは、「治療費の上限を決めること」でした。
家計に余裕があるかどうかではなく、将来の生活を守りながら治療を続けることが、防衛ラインを考える目的です。
正解となる金額はありません。
だからこそ、夫婦で話し合い、「我が家ならどうするか」を考える時間が大切なのだと思います。
私たち夫婦は、こう考えました
ここからは、私自身の体験です。
私はAMH0.6と分かってから転院を経験し、採卵を6回行いました。
治療費だけでなく、検査費用やサプリメント、交通費なども含めると、かかった費用は100万円を超えています。
もちろん、「次こそは」という気持ちは何度もありました。
採卵が終わるたびに、「もう1回だけ頑張ろう」と思ったこともあります。
でも、その一方で、「このまま際限なく続けてしまったらどうなるんだろう」という不安もありました。
だから私たち夫婦は、“あと何回採卵するか”ではなく、”いくらまでなら納得して治療に向き合えるか”という視点で話し合うことにしました。
そうすることで、感情だけではなく、家計や将来も含めて考えられるようになったと感じています。
防衛ラインを決めたことで、気持ちにも変化がありました
不妊治療は、思うような結果が出ないこともあります。
そのたびに、「もっと治療を続けるべきかな」「ここで終わるのは早いかな」と迷いました。
でも、防衛ラインを決めていたことで、その都度ゼロから悩むことは少なくなりました。
もちろん、悲しい気持ちになることはあります。
それでも、「私たちは話し合って、このラインを決めた」という事実が、迷ったときの支えになってくれました。
数字だけでは測れない安心感があったように思います。
防衛ラインは「治療を諦めるため」ではありません
ここまで読んでいただくと、「防衛ラインを決める=治療を諦める準備」のように感じる方もいるかもしれません。でも、私はそうは思っていません。
防衛ラインを決める理由は、「納得して治療を続けるため」です。
終わりが見えない不妊治療だからこそ、何も決めないまま進むより、夫婦で話し合って決めたラインがあるほうが、気持ちも家計も守りやすくなります。
私自身、もっと早くこの考え方を知っていたら、お金に対する不安はもう少し少なかったかもしれないと感じています。
「これで大丈夫かな…」と迷ったら、一人で抱え込まないことも大切
ここまで、「防衛ライン」の考え方をご紹介してきました。
とはいえ、実際に計算してみると、「この金額で本当に大丈夫なのかな?」と不安になる方もいると思います。私も同じでした。
ネットで調べても、家庭によって状況が違うため、「我が家の場合」に当てはまる答えは見つかりませんでした。
だからこそ、家計の整理までは自分たちで行い、必要に応じて専門家へ相談するという考え方も、一つの選択肢だと思っています。
もちろん、相談する・しないに正解はありません。大切なのは、夫婦が納得して決められることです。
我が家の防衛ラインが見えたら「答え合わせ」をしてみる
この記事でご紹介した方法は、あくまで家計を整理するためのワークです。実際には、
- 将来受け取れる年金
- 退職金
- 教育費
- 住宅ローン
- ライフプラン
など、それぞれの家庭によって条件は異なります。
もし、「我が家の場合はどう考えればいいの?」と迷った場合は、FP(ファイナンシャル・プランナー)へ相談し、ライフプランを確認してもらう方法もあります。
客観的な視点から家計全体を見てもらうことで、今後のお金の流れが整理しやすくなる場合があります。
無理に利用する必要はありませんが、選択肢の一つとして知っておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 防衛ラインは一度決めたら変えてはいけませんか?
いいえ。収入や働き方、治療方針が変われば、防衛ラインも見直して大丈夫です。
私も治療を続ける中で、何度か夫婦で話し合い、考え方を更新しました。
半年に一度くらいを目安に、家計を振り返る時間を作るのもおすすめです。
Q2. 貯蓄が少ない場合は治療を諦めるべきでしょうか?
そんなことはありません。大切なのは、他の家庭と比べることではなく、「我が家にとって無理のない金額はどこか」を考えることです。
治療費だけでなく、利用できる公的制度や勤務先の福利厚生なども確認しながら、家計全体で考えていくことが大切だと感じています。
Q3. 新NISAと不妊治療は両立できますか?
ご家庭の状況によって異なります。我が家では、「治療費」と「将来への備え」を分けて考えることで、気持ちにも少し余裕が生まれました。
無理のない範囲で、将来の資産形成も意識していくことは、選択肢の一つだと思います。
まとめ|防衛ラインは「お金」ではなく「安心」を守るために決めるもの
不妊治療では、「あと1回だけ」と思う場面が何度もあります。
私も、採卵を6回経験する中で、そのたびに悩みました。
でも、防衛ラインを決めたことで、「感情だけ」で判断することは少なくなりました。
もちろん、数字だけで答えが出るものではありません。
それでも、夫婦で話し合って決めた基準があるだけで、迷ったときの支えになります。
防衛ラインとは、治療を諦めるための線ではなく、自分たちの人生を守るための線だと、私は考えています。
この記事が、皆さんにとって「我が家らしい選択」を考えるきっかけになれば嬉しいです。
💡次に読みたい
▼ 「防衛ラインを決める理由」について詳しくまとめています。

▼ 実際にかかった費用の内訳を公開しています。

▼ 利用できる公的制度についてまとめています。

▼ この記事で参考にした公的機関
この記事は、私自身の体験をもとに作成しています。
制度や資産形成に関する内容は、以下の公的機関の情報も参考にしました。
- 厚生労働省
- 不妊治療の保険適用
- 高額療養費制度
- 医療費控除に関する案内(国税庁とあわせて確認)
- 金融庁
- NISA制度
- 長期・積立・分散投資の考え方
- 国税庁
- 医療費控除
制度は変更されることがありますので、最新情報は各公的機関の公式サイトをご確認ください。
「なぎ」
30代でAMH0.6(卵巣予備能が低い状態)と診断され、不妊治療を開始。
採卵や転院を経験し、保険適用後も総額100万円を超える治療費を経験しました。
このブログでは、自身の体験と、公的機関が公開している制度情報をもとに、不妊治療のお金・制度・仕事との両立・ライフプランについて発信しています。
専門家ではありませんが、一人の当事者として、「もっと早く知っていれば」と感じたことを、これから治療を始める方にも分かりやすく届けたいという思いで記事を書いています。

