「高額療養費制度が変わったけれど、不妊治療の費用は実際いくら増えるの?」
「採卵を何度もすると、高額療養費はどのくらい使える?」
「治療が月をまたぐと損をするって本当?」
不妊治療をしていると、治療そのものだけでなく、お金についてもたくさんのことを考えなければなりません。
私自身、AMH0.6と診断されてから不妊治療を始め、採卵7回、転院1回、胚移植を経験しました。
保険適用後も治療費は100万円を超えています。
治療を続ける中で何度も助けられたのが、高額療養費制度でした。
一方で、高額療養費制度は「保険診療なら医療費が全部安くなる制度」ではありません。
2026年8月からは自己負担限度額の見直しに加えて「年間上限」も新設されました。
さらに2027年8月には所得区分の細分化も予定されています。
- 高額療養費制度とはどんな制度なのか
- 不妊治療で何が対象・対象外になるのか
- 2026年8月から何が変わったのか
- 2027年8月には何が変わる予定なのか
- 採卵で医療費30万円かかった場合の自己負担額
- 高額療養費の「月またぎ」で何が変わるのか
- 2026年8月から新設された年間上限とは何か
- 高額療養費制度だけではカバーできない費用
- 治療費の家計管理で私が実践した方法
「制度が変わって不安」という方が、これからの治療費を具体的に考えるための参考になれば幸いです。
※この記事では2026年9月時点で公表されている制度内容をもとに解説しています。実際の自己負担額は、年齢・所得区分・医療費・加入している健康保険などによって異なります。
そもそも高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が、1か月(月初から月末まで)の自己負担限度額を超えた場合、その超えた分が支給される制度です。
自己負担限度額は、年齢や所得区分によって異なります。
例えば、70歳未満で年収約370万円~約510万円の所得区分の場合、2026年8月からの月額上限は、
85,800円+(医療費-286,000円)×1%となっています。
医療費が100万円だった場合、自己負担額は約9.3万円です。
「医療費が100万円だから、3割負担で30万円払う」というわけではありません。
高額療養費制度によって、自己負担が一定額まで抑えられる仕組みになっています。
ただし、ここで注意したいのが、「不妊治療にかかった費用すべてが高額療養費の対象になるわけではない」ということです。
不妊治療で高額療養費の対象になる費用・ならない費用
不妊治療では、保険診療と保険診療外の費用が混在することがあります。
そのため、治療費を考えるときは「病院に支払った総額」と「高額療養費の対象になる医療費」を分けて考えることが大切です。
高額療養費の対象になる主な費用
保険診療として行われる治療であれば、例えば、
などが対象になる場合があります。
ただし、具体的な治療内容や請求方法によって異なるため、「不妊治療だからすべて対象」と考えず、医療機関や加入している健康保険に確認することをおすすめします。
高額療養費の対象にならない主な費用
などは、高額療養費制度の対象外です。
私自身も治療を始めた頃は、「保険適用になった不妊治療なら、治療費のほとんどが高額療養費の対象になる」と考えていました。
しかし実際には、保険診療以外にもさまざまな費用がかかります。
そのため、高額療養費の対象になる費用=治療にかかる総額ではないことを最初に知っておくことが大切です。
2026年8月から高額療養費制度はどう変わった?
2026年8月から、高額療養費制度は大きく見直されました。
特に不妊治療をしている人が知っておきたいのは、次の3点です。
順番に見ていきます。
① 月ごとの自己負担限度額が見直された
2026年8月から、70歳未満の自己負担限度額が見直されました。
例えば、年収約370万円~約510万円の所得区分では、月額上限が、85,800円+(医療費-286,000円)×1%となっています。
以前の制度では、80,100円+(医療費-267,000円)×1%でした。
つまり、同じ医療費でも2026年8月以降は自己負担が増えるケースがあります。
採卵で医療費30万円かかった場合
例えば、保険診療分の医療費が1か月で30万円になったとします。
年収約370万円~約510万円の所得区分として計算すると、
80,100円+(300,000円-267,000円)×1%=約80,430円
85,800円+(300,000円-286,000円)×1%=約85,940円
差額は、約5,510円です。
つまり、同じように保険診療の医療費が30万円かかったとしても、2026年8月以降はこの所得区分では自己負担が約5,500円増える計算になります。
ただし、これはあくまで一例です。
実際の自己負担額は、所得区分や医療費によって変わります。
採卵を複数回すると負担増はどうなる?
不妊治療では、1回の採卵で治療が終わるとは限りません。私自身も採卵を7回経験しました。
仮に、先ほどの例と同じような負担増が7回すべてで発生したとすると、約5,510円×7回=約38,570円となります。
もちろん、実際には毎回の治療内容や医療費が違うため、この金額がそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、「1回なら数千円」と思っていた差が、治療回数が増えることでまとまった金額になる可能性があります。

採卵を繰り返す可能性がある人ほど、制度変更による影響を「1回の治療費」だけでなく、「治療全体」で考えることが大切だと感じました。
② 2026年8月から「年間上限」が新設された
今回の制度改正で、私が特に注目したのが「年間上限」です。
これまでの高額療養費制度は、基本的に1か月単位で自己負担を計算する仕組みでした。
そのため、毎月の医療費が自己負担限度額に届かない状態で長期間治療を続けていると、年間ではかなりの医療費を支払っていても、高額療養費の対象にならない場合がありました。
2026年8月からは、こうした長期療養への対応として、年単位の上限である「年間上限」が新設されました。
年間とは、8月から翌年7月までを指します。
つまり、2026年8月から2027年7月までが1つの年間区分です。
例えば、70歳未満で年収約370万円~約770万円の所得区分では、年間上限は53万円とされています。
年間を通して自己負担額が上限に達した場合、その後の自己負担が軽減される仕組みです。
これは、長期間にわたって医療費がかかる人にとって、大きなポイントです。
年間上限があるからといって「不妊治療費が年間53万円まで」と考えてはいけない
ここは非常に重要です。「年間上限が53万円なら、不妊治療費は年間53万円までしか払わなくていい」という意味ではありません。
年間上限は、高額療養費制度の対象となる自己負担についての上限です。
先進医療や自費診療、サプリメント、交通費など、高額療養費の対象外となる費用まで自動的に53万円以内になるわけではありません。
そのため、不妊治療の家計を考えるときは、①高額療養費の対象となる保険診療と②高額療養費の対象外となる費用を分けて考える必要があります。
③ 2027年8月には所得区分もさらに細かくなる
高額療養費制度は、2026年8月の変更だけで終わりではありません。
2027年8月からは、所得区分がさらに細分化される予定です。
現在の制度でも自己負担限度額は所得によって異なりますが、今後はより細かく所得に応じて上限額が設定されます。
そのため、2027年8月以降に治療を続ける場合は、「今の自己負担額がそのまま続く」と考えない方が安心です。
制度は今後変更される可能性もあるため、治療を続けるときは厚生労働省や加入している健康保険から最新情報を確認しましょう。
「月またぎ」で不妊治療の自己負担が変わることも
不妊治療のお金を考えるうえで、もう一つ知っておきたいのが「月またぎ」です。
高額療養費制度では、基本的に1日から月末までを1か月として自己負担額を計算します。
そのため、同じような治療内容でも、治療費がどの月に発生するかによって、高額療養費の適用状況が変わることがあります。
- 月末に生理診察・採血・排卵誘発・自己注射
- 翌月採卵・培養・凍結
このように、治療費が2つの月に分かれることになります。
それぞれの月の自己負担額が限度額に届かなければ、1か月に集中して治療を受けた場合よりも、高額療養費による軽減が小さくなる可能性があります。
月またぎ=必ず「損」ではない
私は採卵を始めた頃、「月をまたぐと損をするのでは?」と気にしていました。
確かに、制度上は治療費の発生する月によって自己負担額が変わる可能性があります。
しかし、不妊治療では、
- 生理がいつ来るか
- 卵胞がどのように育つか
- 採卵日がいつになるか
- ホルモン値がどうなるか
- 移植を予定どおり行えるか
など、自分では決められないことがたくさんあります。
そのため、「高額療養費のために治療日程を調整する」という考え方ではなく、「月またぎになる可能性も含めて治療費を準備しておく」ことの方が現実的です。
私自身も、採卵を7回経験する中で、月またぎを必要以上に気にしなくなりました。
医学的な判断を優先し、そのうえで家計を調整する。
この考え方の方が、不妊治療を続けるうえでは大切だと思っています。
採卵7回を経験して分かった「高額療養費だけでは足りない」理由
私が不妊治療をしていて感じたのは、「高額療養費制度がある=治療費の心配がなくなる」ではないということでした。
高額療養費制度が対象とするのは、あくまで保険診療です。
実際の治療では、それ以外にもさまざまなお金がかかります。
例えば、次のような費用です。
- 先進医療
- 自費検査
- サプリメント
- 通院交通費
- 文書料
- その他の保険適用外費用
私自身も治療を続ける中で、こうした費用が積み重なっていきました。
だからこそ、不妊治療の家計を考えるときは、「高額療養費を使った後の金額」だけを見るのではなく、「治療全体でいくら必要なのか」を考えることが大切です。
私が採卵7回を経験して実践した3つの家計管理
ここからは、制度の話だけではなく、私自身が治療中に実践している家計管理について紹介します。
① 治療費と生活費を分けて考える
私がやってよかったのは、治療費と生活費を分けて考えることです。
生活費と治療費を同じ感覚で管理していると、「今月は医療費が多かったから、生活費が苦しい」という状態になりやすくなります。
そこで私は、治療費については生活費とは別の「治療用のお金」として考えるようにしました。
もちろん、実際に別口座にする必要はありません。家計簿などで、
を分けて把握するだけでも、治療費の全体像が見えやすくなります。
② 「今月いくら」ではなく「採卵1回」で考える
不妊治療では、月によって支払い額が大きく変わります。
今月はほとんど費用がかからなかったと思ったら、翌月に採卵が入り、急に支払いが増えることもあります。
そのため私は途中から、「今月はいくら?」ではなく、「採卵1回でどのくらい必要?」と考えるようになりました。さらに、
- 採卵周期
- 移植周期
- 検査
- 保険診療外の費用
など、治療のまとまりごとに予算を考えるようにしました。
この方法にすると、月またぎになったときも、「今月は損した」と考えるのではなく、「治療費の支払いが2か月に分かれただけ」と考えやすくなります。
③ 「治療が長引く可能性」を最初から考えておく
不妊治療では、「次の採卵で終わる」「次の移植で妊娠できる」とは限りません。
私自身も、採卵を繰り返し、途中で転院も経験しました。
だからこそ途中からは、「治療が長引く可能性もある」ことを前提に家計を考えるようになりました。
といったケースを一度考えておくのです。
もちろん、実際にそこまで必要になるとは限りません。
でも、あらかじめ最悪のケースを考えておくと、急に治療が長引いたときにも慌てにくくなります。
高額療養費制度を利用するときに確認しておきたいこと
これから不妊治療を始める方は、治療開始前に次のことを確認しておくと安心です。
① 自分の所得区分を確認する
高額療養費の自己負担限度額は、誰でも同じではありません。
会社員の場合は、単純な年収だけではなく、健康保険上の標準報酬月額などによって所得区分が決まります。
「年収は分かるけれど、自分の区分が分からない」という場合は、加入している健康保険組合や協会けんぽなどに確認しておきましょう。
② マイナ保険証が利用できるか確認する
マイナ保険証を利用したオンライン資格確認に対応している医療機関では、窓口での支払いが自己負担限度額までとなる仕組みを利用できる場合があります。
ただし、医療機関の対応状況などによっては、あとから手続きが必要になる場合もあります。
③ 高額療養費の対象外費用を把握する
「今回の治療費のうち、どこまでが保険診療なのか?」をクリニックに確認しておくことも大切です。特に、
- 先進医療
- 自費検査
- 自費診療
- サプリメント
- その他の保険外費用
などは、高額療養費の対象外となることがあります。
④ 医療費控除も別に確認する
高額療養費を利用したからといって、医療費控除が利用できなくなるわけではありません。
ただし、医療費控除を計算するときは、高額療養費などで補てんされた金額を考慮する必要があります。
不妊治療では医療費が高額になりやすいため、高額療養費だけでなく医療費控除についても確認しておくと安心です。
高額療養費制度の「値上げ」だけを見て不安にならなくてもいい
2026年8月の制度改正では、月ごとの自己負担限度額が見直されたため、負担が増えるケースがあります。
私自身も採卵を7回経験しているので、「また治療費の負担が増えるのか……」と感じました。
しかし、今回の改正には負担増だけではなく、年間上限の新設という変更もあります。

特に長期間にわたって医療費がかかる人にとっては、年間単位で自己負担を抑える仕組みができたことは重要です。
だからこそ、「高額療養費=値上げされたから悪くなった」と一部分だけを見るのではなく、
- 月額上限
- 多数回該当
- 年間上限
- 所得区分
- 保険診療と保険外費用
をまとめて考えることが大切だと思います。
私が不妊治療を経験して感じた「お金の不安」を減らす方法
採卵を始めたばかりの頃の私は、「今月はいくらかかるんだろう」「次も採卵になったらどうしよう」「あと何回治療が必要なんだろう」と、治療のたびにお金のことを考えていました。
でも、採卵を7回経験して、少しずつ考え方が変わりました。
それは、「治療費を完璧に予測する」のではなく、「予想外の治療費が発生しても対応できる家計を作る」という考え方です。
不妊治療では、治療内容も治療期間も、自分だけでは決められません。
だからこそ、「今月はいくらになる?」だけではなく、「治療が半年続いたら?」「採卵が複数回になったら?」「保険診療以外の費用が発生したら?」というように、少し先まで考えておくことが大切だと感じました。
まとめ|高額療養費制度を知って「続けられる家計」を作ろう
2026年8月から、高額療養費制度が見直されました。
今回の変更で覚えておきたいのは、次の点です。
私自身、採卵7回・転院・胚移植を経験し、治療費は100万円を超えました。
その経験から感じているのは、「高額療養費制度があるから大丈夫」でも、「制度改正で負担が増えるから治療は大変」でもなく、制度を知ったうえで自分の家計を準備しておくことが大切ということです。
不妊治療は、いつ終わるのか、あと何回治療が必要になるのかを最初から正確に予測することはできません。
だからこそ、「損をしない家計」よりも「治療が長引いても続けられる家計」を作ることを私はおすすめします。
これから治療を始める方は、まず自分の健康保険の所得区分を確認し、「1回の採卵でいくら必要になりそうか」「保険診療以外にいくら必要なのか」「治療が複数回になったらどうするか」を一度考えてみてください。
制度を知っておくだけでも、治療費に対する「なんとなくの不安」を、少しずつ「具体的な準備」に変えられると思います。
よくある質問(FAQ)
Q1.2026年8月から高額療養費はいくら値上げされましたか?
所得区分や医療費によって異なります。
例えば70歳未満で年収約370万円~約510万円の所得区分では、月額上限が従来の「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」から「85,800円+(医療費-286,000円)×1%」に見直されました。
医療費30万円の場合、自己負担額は約80,430円から約85,940円となり、約5,510円増える計算です。
Q2.不妊治療の費用はすべて高額療養費の対象になりますか?
いいえ。高額療養費制度の対象となるのは、基本的に保険診療の医療費です。
先進医療、自費診療、サプリメント、交通費などは高額療養費の対象外です。
自分の治療費のどこまでが保険診療なのか、医療機関に確認しておきましょう。
Q3.不妊治療が月をまたぐと損をしますか?
必ず損をするわけではありません。
ただし、高額療養費制度は基本的に1か月単位で計算されるため、同じ治療でも医療費が複数の月に分かれることで、自己負担額が変わる可能性があります。
不妊治療では治療日程を自分で自由に決められないため、月またぎを避けることよりも、月またぎになる可能性を含めて家計を準備しておくことが大切です。
Q4.2026年8月からの年間上限とは何ですか?
2026年8月から新設された、年単位の自己負担上限です。
年間の区切りは8月から翌年7月までです。
長期間にわたって医療費がかかる場合の負担を軽減するための仕組みですが、高額療養費の対象外となる先進医療や自費診療などまで対象になるわけではありません。
Q5.2027年にも高額療養費制度は変わりますか?
はい。2027年8月から、所得区分をさらに細分化する見直しが予定されています。
そのため、2027年8月以降に治療を続ける場合は、その時点の最新情報を確認することをおすすめします。
Q6.高額療養費を利用したら医療費控除はできませんか?
いいえ。高額療養費を利用していても、医療費控除を利用できる場合があります。
ただし、医療費控除の計算では、高額療養費などによって補てんされた金額を考慮する必要があります。
不妊治療では医療費が高額になることもあるため、両方の制度を確認しておきましょう。
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参考文献・公的機関
「なぎ」
30代でAMH0.6(卵巣予備能が低い状態)と診断され、不妊治療を開始。
採卵や転院を経験し、保険適用後も総額100万円を超える治療費を経験しました。
このブログでは、自身の体験と、公的機関が公開している制度情報をもとに、不妊治療のお金・制度・仕事との両立・ライフプランについて発信しています。
専門家ではありませんが、一人の当事者として、「もっと早く知っていれば」と感じたことを、これから治療を始める方にも分かりやすく届けたいという思いで記事を書いています。

