不妊治療では、採卵や胚移植などでまとまった医療費がかかることがあります。
そこで気になるのが「高額療養費制度」です。
私自身も不妊治療で高額療養費制度を利用しましたが、治療を経験して初めて気になったのが「月またぎ」でした。
採卵は1日で終わる治療ではありません。
卵胞を育てるための薬や注射、診察が前月にあり、翌月に採卵、培養、凍結などの費用が発生することがあります。私の場合も、
- 4月:卵胞を育てる薬・注射・診察、採卵術、静脈麻酔などで53,000円
- 5月:培養、胚凍結、先進医療などで100,000円
と、採卵に関係する費用が2か月に分かれました。
そして、4月と5月の保険診療分だけを見ると、それぞれ高額療養費の対象となる金額を超えませんでした。
「同じ採卵周期にかかった費用なのに、月が違うだけで合算できないの?」当時、私が実際に検索したのも、
- 「高額療養費 月またぎ」
- 「高額療養費 月末 月初」
- 「体外受精 高額療養費 月またぎ」
でした。
この記事では、私の実体験をもとに、不妊治療の高額療養費で月またぎがなぜ重要なのか、採卵・培養・凍結などの費用が月をまたぐとどう考えるのかを解説します。
不妊治療の高額療養費は「月またぎ」に注意
高額療養費制度は、1か月に医療機関や薬局の窓口で支払った保険診療の自己負担額が、所得や年齢などに応じた自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分が支給される制度です。
ここで重要なのが、「1か月」の考え方です。
高額療養費の計算は、治療開始日から30日間、あるいは採卵周期全体などではありません。
原則として、1日~月末までの「暦月」単位で計算されます。
厚生労働省も、高額療養費制度について1か月(暦月)単位で自己負担額を計算する仕組みとしています。つまり、
というように分けて考えます。
「同じ採卵周期」でも月が違えば別計算
ここが不妊治療で特に分かりにくいところです。例えば、
4月→ 卵胞を育てる薬・注射・診察
5月→ 採卵・培養・凍結
という治療の流れだったとします。
患者側から見ると、「全部、同じ採卵のための治療費」ですよね。
ところが、高額療養費は治療全体の合計額ではなく、基本的に月ごとの自己負担額で判定します。
そのため、
「採卵周期全体ではかなりお金がかかったのに、高額療養費が使えなかった」
ということが起こり得ます。
私も採卵で「高額療養費の月またぎ」を経験しました
私自身、不妊治療で実際に月またぎを経験しました。
高額療養費制度についてある程度調べていたので、制度そのものは知っていました。
ただ、実際に治療を進める中で、「採卵周期の費用が月をまたぐと、月ごとに計算される」という点を強く意識するようになりました。
私のある採卵周期では、次のように費用が分かれました。
| 月 | 主な費用 | 支払額 |
|---|---|---|
| 4月 | 卵胞を育てる薬・注射・診察、採卵術、静脈麻酔など | 53,000円 |
| 5月 | 体外受精・顕微授精管理料、受精卵・培養管理料、胚凍結保存管理料、先進医療など | 100,000円 |
2か月合わせると、153,000円です。
ただし、この金額をそのまま高額療養費の計算対象にできるわけではありません。
私の場合、5月の10万円には先進医療の費用も含まれていました。
先進医療にかかる費用そのものは、高額療養費の対象外です。
一方、先進医療と併用する通常の保険診療部分は保険診療として扱われます。
厚生労働省も、先進医療では「先進医療に係る費用」は全額自己負担となる一方、通常の診療と共通する部分は保険診療として扱われると説明しています。
そのため、私の場合も、4月の53,000円+5月の100,000円=153,000円という単純な計算ではなく、「各月の保険診療分はいくらだったのか」を分けて考える必要がありました。
そして結果として、先進医療を除いた保険診療分だけでは、4月・5月ともに高額療養費の対象となる金額を超えませんでした。
もし費用が同じ月に集中していたら、高額療養費の対象になっていた可能性があります。
なぜ「月またぎ」だと高額療養費を使えなくなることがあるの?
例えば、仮に高額療養費の自己負担限度額がA円だったとします。
ケース1:治療費が1か月に集中した場合
5月に保険診療の自己負担額がA円を超えた
⇩
高額療養費の対象になる可能性がある
ケース2:治療費が2か月に分かれた場合
4月:A円未満
5月:A円未満
⇩
4月も5月も限度額を超えない
⇩
高額療養費の対象にならない可能性があるという違いが生まれます。

つまり、「治療全体で高額だったか」ではなく、「その月の保険診療の自己負担額が限度額を超えたか」が重要です。
厚生労働省も、高額療養費は暦月単位の制度であり、月をまたいで治療した場合に自己負担額を合算できないことを案内しています。
採卵はなぜ「月またぎ」になりやすい?
不妊治療、とくに採卵では、治療が複数日にわたります。
例えば、次のような流れになることがあります。
- ①月経開始
- ②卵胞を育てる薬や注射
- ③複数回の診察・超音波検査
- ④採卵
- ⑤受精
- ⑥胚の培養
- ⑦胚凍結
そのため、卵胞を育てる治療は4月⇒採卵は4月末~5月⇒培養・凍結などは5月というように、費用が複数月に分かれることがあります。
特に不妊治療では、「治療を受けた日」と「その治療に関連する費用が発生するタイミング」が患者から見ると分かりにくいことがあります。
私自身も、採卵当日の費用だけでなく、前月から卵胞を育てるための薬・注射・診察などがあり、さらに採卵後には培養や凍結などの費用が発生しました。
その結果、採卵に関連する費用が2か月に分かれました。
採卵・培養・凍結はすべて高額療養費の対象?
ここも注意したいポイントです。
「不妊治療にかかった費用=すべて高額療養費の対象」ではありません。
高額療養費の対象になるのは、基本的に保険適用される診療に対して支払った自己負担額です。
一方で、先進医療にかかる費用などは高額療養費の対象外です。
厚生労働省の資料でも、保険適用される診療の自己負担額が高額療養費の対象であり、先進医療にかかる費用は対象外とされています。
そのため、領収書を見て、「今月10万円払った」だけでは判断できません。例えば、
- 保険診療分
- 先進医療分
- その他の自費費用
などに分けて考える必要があります。
私の場合も「10万円=高額療養費の対象額」ではありませんでした
私の5月の支払いは約10万円でした。しかし、その中には先進医療の費用も含まれていました。
そのため、「5月に10万円払ったから、高額療養費が使える」とは考えられません。
実際に確認すべきなのは、「その10万円のうち、保険診療の自己負担額はいくらなのか」です。
ここは、これから不妊治療を始める方にもぜひ知っておいてほしいポイントです。
「月末に採卵すれば得?」と考える前に知っておきたいこと
高額療養費について調べていると、「月末に採卵した方が得なのでは?」と考える方もいるかもしれません。
確かに、治療費が同じ月に集中することで、高額療養費の対象となる可能性が高くなるケースはあります。
ただし、高額療養費だけを理由に治療日を決めることはおすすめしません。不妊治療では、
- 卵胞の成長
- 排卵のタイミング
- ホルモン値
- 採卵できる状態
- 医師の判断
- クリニックの治療方針
など、医療上の要素が優先されるからです。
「月末まで待った方が得」と自己判断するのではなく、治療上の適切なタイミングを優先し、そのうえで費用の仕組みを知っておくという考え方が大切だと思います。
不妊治療で「月またぎ」を気にするときに確認したい3つ
治療前に、次の3つを確認しておくと安心です。
① 今月の保険診療の自己負担額はいくらになりそうか
クリニックに、
「今月の保険診療分は、現時点でどのくらいになっていますか?」
と確認してみましょう。
採卵周期では、診察や薬、注射などが積み重なるため、途中で確認しておくと費用を把握しやすくなります。
② 翌月にどのような費用が発生する予定か
例えば、次のような治療がいつ発生する予定なのかを確認します。
などがいつ発生する予定なのかを確認します。
ただし、実際の診療日や請求の扱いは医療機関によって異なる場合があるため、最終的にはクリニックや加入している健康保険に確認するのが安心です。
③ 自費・先進医療の費用はいくらか
「今月10万円」という総額だけを見るのではなく、保険診療分と保険外の費用を分けることが重要です。
先進医療については、先進医療部分が全額自己負担となる一方、通常の保険診療と共通する部分は保険診療として扱われます。
2026年8月からの高額療養費制度では「年間上限」も導入
2026年8月から、高額療養費制度が見直されています。
厚生労働省によると、2026年8月からは、これまでの月単位の自己負担上限に加えて、年間の自己負担上限(年間上限)が設けられています。
年間上限は8月から翌年7月までの期間で考える仕組みです。
ただし、今回の記事で覚えておきたいのは、「年間上限ができたから、月またぎを気にしなくていい」というわけではないということです。
不妊治療の費用を考えるときは、まず、①月ごとの高額療養費を確認し、そのうえで、②年間上限という順番で考えると分かりやすいでしょう。
2026年8月からの制度変更について詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

高額療養費と医療費控除は別の制度
不妊治療では、高額療養費だけでなく医療費控除も忘れないようにしましょう。
高額療養費は健康保険の制度です。
一方、医療費控除は所得税・住民税に関係する税制上の制度です。
そのため、「高額療養費が使えなかった=何もできない」とは限りません。

私自身、不妊治療では治療費以外にもさまざまな費用が積み重なりました。
高額療養費の対象になるかどうかだけではなく、1年間の医療費全体を確認することも大切です。
▼ 医療費控除について知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)
Q1.高額療養費は月をまたいだ治療費を合算できますか?
原則として、月をまたいだ自己負担額を合算することはできません。
高額療養費は暦月単位で計算されるため、4月分と5月分はそれぞれ別に判定されます。
Q2.採卵が月末、培養や凍結が翌月になった場合はどうなりますか?
採卵や培養、凍結などにかかった費用は、実際の診療・請求の内容に応じてそれぞれの月に分けて扱われます。
同じ採卵周期だからといって、すべての費用を一つの月にまとめて高額療養費を計算するわけではありません。
Q3.先進医療の費用も高額療養費に含まれますか?
先進医療にかかる費用そのものは、高額療養費の対象外です。
ただし、先進医療と併用する通常の保険診療部分は保険診療として扱われます。
Q4.「月末に採卵した方が得」というのは本当ですか?
治療費が同じ月に集中することで、高額療養費の対象となる可能性が高くなるケースはあります。
ただし、不妊治療は医学的なタイミングが重要です。
高額療養費だけを理由に採卵日などを自己判断するのではなく、治療上の適切なタイミングを優先しましょう。
Q5.マイナ保険証を使っていれば月またぎでも大丈夫ですか?
マイナ保険証を利用していても、高額療養費の「暦月単位」という仕組みがなくなるわけではありません。
マイナ保険証による窓口負担の軽減と、月またぎの計算は別に考える必要があります。
Q6.2026年8月から年間上限ができたなら、月またぎを気にしなくてもいいですか?
いいえ。2026年8月から年間上限が導入されましたが、高額療養費の月単位の仕組みがなくなったわけではありません。
不妊治療の費用を考える際には、まず月ごとの保険診療の自己負担額を確認し、そのうえで年間上限なども確認するとよいでしょう。
Q7.高額療養費が使えなかったら、不妊治療費の負担を減らす方法はありませんか?
高額療養費以外にも、医療費控除や加入している健康保険、自治体の制度、民間保険などを確認できる場合があります。
制度の対象や条件はそれぞれ異なるため、自分が利用できる制度を一つずつ確認してみましょう。
まとめ│不妊治療の高額療養費「月またぎ」
今回のポイントをまとめます。
- 高額療養費は原則として1日~月末の暦月単位で計算される
- 同じ採卵周期でも、月をまたぐと月ごとに判定される
- 保険診療の自己負担額が高額療養費の計算対象になる
- 先進医療にかかる費用は高額療養費の対象外
- 先進医療と併用する通常の保険診療部分は保険診療として扱われる
- 「1か月にいくら払ったか」だけではなく「保険診療分がいくらか」を確認する
- 2026年8月から年間上限も導入されたが、月単位の計算を理解しておくことは引き続き重要
- 治療日を高額療養費だけで自己判断せず、医療上のタイミングを優先する
私の場合は、採卵に関する費用が4月と5月に分かれました。4月:53,000円、5月:100,000円。
一見するとかなり高額でしたが、5月には先進医療の費用も含まれており、保険診療分だけでは4月・5月ともに高額療養費の対象となる金額を超えませんでした。
これが、不妊治療で高額療養費を考えるときの大切なポイントです。
💡次に読みたい記事
▼ 高額療養費制度そのものについて詳しく知りたい方へ


▼ 高額療養費制度の2026年の変更点や制度全体を確認したい方へ

💡参考にした公的情報
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
厚生労働省「先進医療の概要について」
厚生労働省「保険外併用療養費制度について」
厚生労働省「高額な外来診療を受ける皆さまへ」
※高額療養費の自己負担限度額や対象となる費用、医療機関での請求方法などは、年齢・所得区分・加入している健康保険・診療内容などによって異なります。実際の自己負担額については、加入している健康保険や医療機関にも確認してください。
「なぎ」
30代でAMH0.6(卵巣予備能が低い状態)と診断され、不妊治療を開始。
採卵や転院を経験し、保険適用後も総額100万円を超える治療費を経験しました。
このブログでは、自身の体験と、公的機関が公開している制度情報をもとに、不妊治療のお金・制度・仕事との両立・ライフプランについて発信しています。
専門家ではありませんが、一人の当事者として、「もっと早く知っていれば」と感じたことを、これから治療を始める方にも分かりやすく届けたいという思いで記事を書いています。
